2020春【イエスタデイをうたって】全話見た評価/感想

評価

  • ストーリー・・・7点
  • 作画・・・8点
  • 声優・・・7点

総合・・・22点(30点満点)

総評:くっついたり離れたり。平成世代の人間関係。

原作の1巻が1999年刊行。

作画や風景描写などは今風に洗練されていますが、話の軸となる人間関係は平成初期や昭和末期を思わせるような描写となっています。

当然携帯電話はなく、PHSやポケベルも出てこない「イエ電」の距離感

 

そんな中で、それこそ、くっついたり離れたり。ハリネズミのように、お互いのトゲで傷つかない距離をはかる登場人物たち。

 

大人の恋愛をテーマにした本作。女子高生モノや異世界モノにはない魅力が、ここにはあります。

4人の主人公が織りなす、もどかしい日々

この作品の主な登場人物は4人。

フリーターの陸生。

教師をしている榀子。

榀子の高校の元教え子の晴。

榀子の幼馴染の弟の浪。

 

それぞれが、それぞれの想いを抱えて、東京での日々を送っています。

そんな彼らが出会い、ぶつかり、距離を推し量る。そんな物語です。

浪の兄は榀子の想い人

浪の兄は榀子の想い人であり、早くしてこの世を去っています。

ある意味声も出さないこの兄こそが物語の渦の中心であり、そこに登場人物たちが巻き込まれているとも言えます。

 

一方でそこに一石を投じるのが、陸夫であり晴なのです。

晴は陸夫に、陸夫は榀子に片思いしているのです。

 

ここまで書くと、ラストまで見通してしまう方もいるかもしれません。

 

ですが、この作品はあっと驚くような展開や結果が待っているような類のものではなく、あくまでそこまでの経過を楽しむ作品となっています。

人によっては「物語が進まない」と思うかも

この作品を楽しめる人は、きっと重松清や宮本輝といった現代小説なども好きかもしれません。

池井戸潤のような燃えるような展開は、この作品にはありません。

 

あるのは、物語のしわ、ひだともいえる丁寧な人間関係描写

 

とにかく、物語がなかなか進展しません。ある意味、映画化すべき作品だったかもしれません。1クールでやるには、展開に乏しいのです。

 

それでも僕がこの作品を好きなのは、丁寧であるがゆえに描写や演出に嘘をつかない、いや、つけないところ。

それだけ作品の良い意味での緻密さを感じます。

何物でもない若者たちの日常を尊いと思えるかどうか

この作品の登場人物たちは、夢を抱き、それでも「俺なんて」「私なんて」と、ナニモノにもなれないことを恥じ、つつましく生きています

そんな彼らにとって、恋愛という山・壁はただでさえ高いものです。

しかし、外側から見れば大した山ではなくたって、本人たちから見れば剣のような山に見えるわけです。先が見通せない。

 

そんな山を登り切って、見えた景色を愛しいと思う。尊いと感じる

そんな日常の連続を愛せる人は、きっとこの作品を面白いと感じてくれるはずです。

ラストも賛否両論でしょうね

恋愛という山を登り切ったからこそ、陸夫と榀子はある選択をすることになります。

よく僕たちの人生でもありますよね。「なんてつまらないことで悩んでたんだ」と。

 

本当に、そんな感じ。でもそれが昭和末期~平成生まれの青春なのです。

学校で「出る杭は打たれる」「協調性を重視しろ」と言われ、社会では「お前は何者か」「特技はなんだ」と学校とは真逆の事を問われる。そんなゆとり~ロスジェネ世代の人間には、感じる所が多いかもしれません。

人間関係の痛みや喜び、それらの淡い色合いが好きな人にはお勧め

まあそんなことはさておき、人間関係の機微や淡い色合いの物語が好き、そんな人にはおすすめです。

僕も原作を知らずにアニメを見ましたが、こうなるだろうなというラストに自然と収まる感じはなんだか逆に気持ちがよかったです。

見て晴れ晴れした気分になっていただけると、紹介したほうとしても嬉しいです。

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